2023-05-12

014 チャップマン事件
1967・06 ストックホルム・スウェーデン

夕方5時過ぎにストックホルム駅に着く 陽はまだ高かった

北極圏のラップランドでは 太陽は沈まないが

少し下がったストックホルムでは 22時ごろまで明るい

YHストックホルムは世界的にも珍しく 外洋ヨット チャップマン号が改修されていて 

人気も高く 日本ではとても予約ができなかった

ダメ元で直接押し掛けて懇願した ペアレントは笑顔で迎えてくれた

時間帯が良かったか 天が味方したか兎に角 運がよかった

「日本人がいる」と案内され リュックを船室に置いて彼のもとへ直行

早稲田大学院生の松永君とは その後長い付き合いとなった

同じ建築を目指す同志として親近感と共に 勤めていた所長の後輩でもあり

付き合いはないが新進気鋭の先輩がいることはよく知っていた

そんな経緯から話に力が入り 部屋に戻ったのは午前2時を過ぎていた

部屋に戻った時 何か変??? リュックの紐が緩んでいる

急いで中身を全部出して探すが 見つからない

「あれ?どこかに忘れてきたか・・・」 一瞬考えたが確かに底に入れた記憶はあった

ニコンのカメラ2台が無くなっていた

松永君を起こし 探すが見つからない

当時のニコンは名が通っていて 外国人の羨望の的だった

「警察に行こう!」 松永君に励まされ チャップマンを後にした

午前3時のストックホルム警察は閑散としていた

手短に事情を説明する 髭を生やした愛想の良い担当官は

「俺は日本人が大好き 息子も来月日本人女性と結婚する…」

話がずれていくのを軌道修正して まず調書作成に集中してもらう

結局 数日間の記録は取り戻せなかった

警察署をでると陽は昇っていた ショックと後悔で一睡もせず善後策を考えた

結局フイルムだけでも取り戻したいと マスコミに働きかけるがダメだった

とりあえずカメラを手に入れようと 日本人を見つけては聞いて回った

二日後 やっとヤシカのハーフサイズカメラを手に入れた

思わぬ出費に旅行予定の変更を余儀なくされた

松永君とは帰国後連絡を取り合って 今でも年賀状のやり取りをしている

大事なものは肌身離さずいつも身につける 習慣となった