ラップランドは 見事に車は通らない
曲がりくねった道 白樺のような林と広々とした草原
山には雪が残っている
夏山の8,9合目のような感じの景色
溶けだした 永久凍土はコケに水溜りを造り
時には小川となり 道にはみ出して流れている
高山植物のような黄色い花も 咲いている
蚊の大群もいて 狙ってくる
歩いては休み 休憩は日の丸リュックを見せて
森と泉にかこまれて
静かに眠る ブルー・シャトー・・・
力づけに歌うしかない
歩きながら歌う
疲れて小休止していると
? 煙が出ている へんてこな車が来て止まった
窓は全開だった
「こんな辺境で 日本の国旗に出会えるなんて・・・」
夢じゃないか? 日本語ではないか!
助手席の女性が話しかけてきた
「どこに行くの?」
「最北端の街・ハンメルフェスト」
「ガソリン臭いけど 乗る?」
おっかない車が来たものだ
「道がデコボコなのに ジャン・Pたらスピード落とさないから・・・」
道に出ていた岩角に タンクをぶつけたらしい
文句は言えない おっかなびっくりで乗せてもらう
そのうち慣れてきて 臭いは気にならなくなった
ソルボンヌ大に留学中だったレイ子は ジャン・Pと出会った
ジャーナリスト志望の彼は就職先も決まっていて
ハネムーン旅行の最中だった
久しぶりの母国語会話は楽で楽しい
旅のエピソードは当然ネタとなっていた
やがて分かれ道にやってきた
「ちょっと行きたいところがあるから・・・ パリに必ず来てね」
味噌汁をご馳走すると言うレイ子・Pからアパルトマンの住所を貰う
数か月後パリで再会 味噌汁を堪能したのは言うまでもない
午前1時は過ぎても 夕陽は地平線をのんびり走っている
ラップの子供たちは こんな時間なのに遊んでいた
時間の感覚が全く分からなくなっていく
最北の景色は 山がなだらに静かな海へとつながっていた
斜面にはポツポツ 色鮮やかな住宅が立っているところ見ると町は近い
絵葉書のような景色に しばし見とれている
1台の車がやってきた
ラッキー つい手を挙げてしまった
中年のおばちゃんが運転しているハンドルの横に
メーターを発見 タクシーだ ヤバイ!
丁寧にお詫びして ごめんなさいをした
何かしゃべっているがわからない
どこに行くのか?と聞いているようだったので
「スオミラトケレマヤ・・・」 (フィンランドYHの意)
頷いて 笑顔で乗れという
ゼスチャーでお金ない・・・
OK、OK 有難く乗せてもらうことになった
山の中腹にあるユースホステルにやっと着いた
ペアレントを起こしてチェックイン
2階のベッドルームに案内された
2段ベッドが4台置いてあった
入り口の上段を指定された
重いリュックを置き 下段を見ると
身に覚えのある髭男がいた
「着いたよ!」と揺り起こす
何が起きたか理解できない男はジーと見つめ
意味不明な声を挙げ
笑顔に変わるのに時間はかからなかった
抱き合って喜んだ
何をやってる??? 部屋のみんなも起きてしまった
ジャック・Wが事の顛末を説明する
共感を得て ともに喜んでくれた
YHを利用する者に 連帯感は確かに存在した
翌日 朝食を共にすると
「お前はチャレンジャーだ!
本当に来るとは思わなかった
一昨日着いていたが
一日待って現れなかったら出かけようと思っていた」
笑いながら本音を漏らした
「次はどうする?」
また挑戦状?
二人で今後の計画を練る
当初はこのまま逆コースでヘルシンキに戻る計画を立てていたが
彼の案のほうが数倍もエキサイティングなものだった
気が付けばフィンランドからハンメルフェスト・ノルウェーに来ていた
明日は フィヨルドの中 点在する島々をトロムソまで
船旅と 洒落こむこととなった
チャレンジャーは君のほうだと心の中で呟いた