大学時代 一日で房総半島を先端までヒッチハイクをする
ちょっとした冒険に出かけたことは体験していたが
まさか外国でやるとは思わなかった
ジャック・Wと朝食を取りながら ブリーフィング
ヒッチハイクをするとき 親指を立てるのはなぜか?
いきなりの質問に答えられないのを見て
その昔 ローマ帝国ネロ・クラウディウス皇帝はキリスト教徒を迫害した
ライオンと戦わせ瀕死の時 皇帝が親指を上に示したら 「助けてやれ」
下にしたら「殺せ」のサインに使われていた
サインの始まりは大体そこから始まったらしい
その他 ルート情報や注意事項を細かく聞いておく
ヒッチハイクは相手次第 5日後ハンメルフェストでの再会を約して別れる
まずスカンジナビア半島の地図を 手に入れるべく
土産物ショップに行き ジャック・Wが持っていた同じ地図を手に入れる
国道4号線を辿っていくと 確かにその街は存在した
ヨーロッパ最北端の街ハンメルフェストに 印をつけルートを決める
車は結構通っている これなら割と早く着くかもと気楽に考えていた
国道まで出ないとお目当ての車は 見つからないと思い歩いていると
ジャック・Wが お先に!と手を振って追い抜いて行った
どうもYHの客と話をつけていたみたい さすがコツを得ている
歩きながら親指を立てて ファーストトライするが全然止まってくれない
リュックを背負った どこの馬の骨かわからない若者を乗せる人はいない
つまり全くの素人が上手くいくはずがない
振り返ってみると大変な挑戦状を 受け取ったものだ
だが遣り甲斐はある 自分で自分を納得させる
歩きながらではダメ きっちと止まって
お願いします の必死さが伝わらない
深く反省して考えてみることからスタート
止まってくれる人は好奇心 人助けがしたくなる心情
貧しい人を応援してあげたい年配者
ヒッチハイクの経験者で恩返しや長距離運転手の
退屈しのぎ等々理由は様々
試行錯誤していると
車の間から 馬車が来た 外国で見る初めて見る光景で新鮮だった
帽子をかぶった立派な白い顎鬚老人が止まった
乗れというゼスチャー
えっ! 乗せてくれるの?
車のことしか 頭になったから・・・
思いもしない展開に戸惑い
「キートス」 お礼を言って荷台に乗る
仰向けに寝そべると360度 流れる雲に紺碧の空が眩しい
優しい干し草の匂いも嬉しかった
心地よい揺れに 寝てしまった
馬車が止まり おじいさんは何か言っている
雰囲気でここまでかと察知して
「キートス」 別れを告げた
あたりは一面の牧草地 ところどころに森が見える
こうしてヒッチハイクの旅は始まった
結局この日はYHが見つからず 途中で知り合った女子学生から
近くのキャンプ場を紹介され 宿泊することにした
体を休めながら どうしたら成功できるか策を練ることにした
安心して乗せてくれる人を見つけるにはどうしたら良いか
まずひらめいたのはリュックの日の丸
日本を出るとき友人が 中国人かベトナム人か間違えられないようにと
わざわざリュックに縫い付けてくれていた
まず何者? の解決策は見つけた
もう一つの策はやはり 笑顔だった
俺は敵ではないというシグナル
NYの中西君が教えてくれた 誰かと目線があったら笑顔で返せという教え
効果は抜群であったことを思い出した
まずこの二つの策を明日は実行しよう考えている途中で
意識がなくなっていった
陽はすでに昇っていたので寝すぎたと焦ったが
時計を見るとまだ6時
簡単ないつもの朝食をとり キャンプ場を後にする
国道に出て リュックの日の丸がよく見えるように置いた
相変わらず誰も止まってくれない
見極めが大事と 車をよく観察する
カップルは敬遠してやり過ごす 女性も難しそうだ
タイミングを見ていると
キャンピングカーをけん引しているベンツが止まった
「どこまで行く?」 英語で聞いてきた
「ハンメルフェストまで」 途中までならOKと乗せてくれた
「日本人?」
「そうです」
「どうして日本人とわかった?」
「国旗が目に付いた」
「ダンケシェーン」 (ありがとう)
直感でドイツ人と判断した 正解だった
いつものように これまでの経緯を手短に話した
この車は ハンブルグから別荘に行く途中のドイツ人家族だった
いかにもドイツ人らしい運転している父親は
先の大戦は日独なら勝てたが イタリアを入れたから負けたと話し出した
そのあたりの話にあまり興味は無かったが
話を合わせながら話題を変えていった
日独は優れた技術と才能があったが
イタリアはだめだと持論を相変わらず繰り返していた
色々な人がいて 色々な意見を言うとは慣れているので聞き流していた
「ランチ食べていく?」 食事の招待は逃す手はない
「ダンケシェーン」
時間つぶしのたわいのない話を続けていく
車は国道から右に折れた
しばらく行くと小高い丘に建つ立派な別荘が見えてきた
凄い金持ちなんだと 現物で確認した
別荘から湖が一望できた
長男 長女 次女それぞれ紹介された
名前は忘れたが いかにもドイツ人らしい名前だった記憶している
3人とも10代後半のすらりとした
いかにも育ちが良いという気品を身に着けていた
コーヒーを頂き お喋りしていると
父親が湖から戻ってくるのを見つけると
急いで服を脱ぎだした
「えっ!」
状況が読めなかった
目のやり場が無い 焦点を合わさないようにしていた
父親も母親も裸になり
お前も来いと言ってきた
未体験ゾーンに入っていく 理由がわからないまま裸になり外に出る
みんなは一斉に湖畔の小屋をめがけて走っていく
小屋の中は温められていて 木製の板が3枚階段状に置かれている
ドラム缶が入り口近くに置いてあり ゴツゴツした岩が入れてあった
家族はそれぞれ好きなところに座る
父親が号令らしきことを発して 始まった
小枝でドラム缶に水をかける
ジューと音立てて 蒸気が一気に押し寄せてきた
ムッと熱気が襲ってきた
じっとみんな我慢している
父親がもう一回小枝で水をかける
みんなは我慢の限界とばかり飛び出して行き 湖に飛び込んだ
爽快な気分に浸っているのはわずか
寒さに代わる頃また小屋に駆けこむ
3回ほど繰り返して やっとランチにありつけた
サウナ初体験は
ユバスキュラ近郊の別荘 裸のドイツ人家族と共に深く刻まれた