2023-05-12

023 思わぬ展開
1967・07 コペンハーゲン・デンマーク

《デンマーク王子ハムレットの悲劇》

書いたシェクスピア 一度も訪れたことのないクロンボー城

想像力を膨らませて エルシノア城として設定したのは凄い感性だ

対岸のヘルシングボリ・スウェーデンを眺め 

367年前のシェクスピアを想う

海峡を渡ってくる汐風に身を任せ 旅情を味わった

デンマークの首都コペンハーゲンまで 30km

小一時間でYHに到着

シャワーを浴びてサッパリ

着替えて部屋に戻ると ここにも東洋人がいた

「日本人ですか?」 雰囲気で何となく感じて聞いてみる

「そうです・・・」 会話にならない会話を何とか繋げる

最近 日本からシベリア鉄道を使って着いたばかりだという

当時ヨーロッパにくる方法は

シベリア鉄道 モスクワ経由で入るか

日本郵便の船でマルセイユ・フランスに入る方法の二つがあった

無口な彼を誘って近くで 食事する

断片的でポツリポツリ話を始めてきた

KO大の学生で 松本と名乗った

それ以上深くは聞かなかった 何か事情があるらしい

ここのYHは規則で3日しか連泊できない

いよいよ決断すべき時か 迷っていると

KO大生が寄ってきてペンションを借りませんか? 

提案してきた

来週やってくる彼女を どこかで待つ必要があった

ペンションとは1週間単位で借りられるアパート

代金は半分に抑えられる 魅力的な提案に乗る

YHで紹介された近くのペンションに落ち着く

食事の時は 相変わらずポツリポツリと断片的に話す

青白い顔のいかにもKO大生だ

その夜 驚愕の事実が判明する

突然大声で

「その考え方はいかにもブルジョア的だ!」

「大衆のために・・・」

「?」

興奮をさせないように言葉に気をつけ

「君は大学で 何やってたの?」

堰を切ったように 雄弁に話し出した

要約すると

全学連の書記長をやっていたが 内部闘争に巻き込まれ

殺されそうになり 日本を脱出してきた

彼女も余波を受け 来週落ち合うという

後悔先に立たず !!!

何か変だと思った予感は 当たっていた

その筋の話は避けるように 共通の話題を探した

取るものも取り敢えず 行動した結果彼も金銭的に余裕はなかった

対策会議の結果 バイト探しをすることになる

当時の北欧諸国は人手不足で イタリアやモッロコから出稼ぎを受け入れていた

共通の目的のために 翌日から旧市街に出向いて飛び込み営業をした

言葉が話せないハンディは大きかった

一日中 目に付く店は片っ端から聞いて回ったが完敗だ

夕方 チボリ公園入口近くのレストランが目に付いた

祈る思いでマネージャーに会った

「何でもやりますので働かせてください」

身分証明になるパスポートを見せ

恥も外聞もなく頭を下げた

こちらに来いとゼスチャーで 手招き

レストランの裏手に回る

色々な人種の人が忙しく働いていた

「マキー!」

東洋人に何か支持をしていた

彼は頷いて マネージャーは去っていった

「良かったね 最近3人辞めて困っていたところ 

よろしく頼むね 握手を求めてきた

時間1ドル2食付き朝9時からと条件を告げられた (ラッキー!)

職場の仲間を紹介してくれ 夢の実現のためここで働いていることを知った

マキーさんは画家を目指してヨーロッパに来て 2年前からここで働いていた

九州男児の彼は みんなから信頼されていて職場のリーダーでもあった

皿から残り物をゴミボックスに落とし 食洗器に入れ

出来上がった食器やグラスを 店内の所定のところに運ぶ単純作業

これで衣食住の三拍子がそろった

今でも忘れない お世話になった

チボリ公園正門前のABCレストラン

働き出した最初の土曜日 給料が出た

貧乏生活から少し余裕がでた

デスコに行きたい! という松本君とドアを開ける

当時流行っていたイギリスのロックバンド 

プロコル・ハルムの 《青い影》

がかかっていた 何かを暗示するように・・・

フロアの周りには 立ち席用のちっちゃな丸いテーブルがいくつもあって 

その一つのテーブルに二つの影があった

松本君が慣れた素振りで声をかける 女性には行動できるんだ!

若者たちの境界はすぐ取れていく

簡単な自己紹介で壁も取れていく

建築家の卵 旅で出会った人々 沈まない太陽 未体験ゾーン 

セントラルパークの歌姫 思いつくままよく話をした

みんなも打ち解けて 良く喋り 良く踊った

さり気なく 探るような KO boy

「YHを追い出され 今は二人でペンションにいる

来週 彼女が日本から来る 彼は一人になってしまう・・・」

何思ったのか 松本君が話題に出した

気にしてくれていたことは 有難いが・・・

何も今言わなくても…と思った

「部屋ならあるから うちにくる?」

看護師 ギャルダ・Pが話題に答えてくれた

一瞬 プロコル・ハルムの 《青い影》 が止まった