2023-05-12

010 旅の始まりは
1967・04 ホノルル・アメリカ

24歳 まさか外国に行くなんて 

ぼんやりとした憧れはあったが 想像すらしていなかった 

夢の始まりは

設計事務所に在籍2年半経った頃

父が二回目の心筋梗塞で倒れたと母からの電話

心臓の一部は壊死したが普通の生活に戻れたが無理はできないと医者は言う

一回目は大学時代に起きていたらしい

その時は心配をかけまいと家族内で秘密にしていた

事情が分かると 帰るかべきかどうか 決断の時は近づいていた 

事務所の先輩に掻い摘んで事情を説明 相談に乗ってもらう 

先輩は少し考えて 結局お前は何になりたいのか!?

核心をついてきた 良い作品を作りたいと即座に答える

建築には 創造の芸術と造形の芸術がある

創造の芸術とは設計 造形の芸術とは施工

どちらから始めても結果は同じであると

簡単に答えてくれはしたが 

それから先は自分で判断せよと突き放された

悩んで悩み抜いて 苦渋の決断をする

名古屋に帰り父の会社に入社する

生活が一変 資材トラックの運転をしながら あのまま東京に残っていたら・・・

どうしても考えてしまうと 仕事にも力が入らなくなる

そんな姿を見ていた父から 提案があった

「気分転換に ジャルパックで世界一周してくるか?」 笑顔の父

「パック旅行は映画を見ているようなもの 同行者と日本語でしゃべり

知っているところの確認旅行じゃつまらない

どうせ行くなら体験したいから 一人で行きたい」

ダメ元で逆提案した

二日後

「じゃー世界を見てこい」 あまりにあっさり許可が出たので信じられなかった

半年がかりで ざっくりした2か月の世界旅行計画が出来上がった

1967年4月 初めての異国の地 

歓迎のレイを首に掛けられた観光客になっていた

機内で知り合ったニューヨークタイムズ タイ人特派員とYMCAホテルに泊まる

ワイキキビーチ沿いのレストランに席を取り 

ヤシの木に真っ赤な夕陽が沈むのを眺め ビールで乾杯 

ついに日本を脱出して 外国に来た実感を味わう

酔い覚ましに歩いて帰ろうと 大きな駐車場を横切っていた時

二つのライト 黒い影が行く手をふさぎ

「ここで 何をしている?」 

突然の出来事に理解が付いてこない

ぎこちない英語で ホテルに帰るため歩いていたと

説明しながら 言われたパスポートを出す

入国日を確認してやっと許された

怪訝な顔をしている観光客に

「ここはボーイフレンドとガールフレンドが集まるところ この先には行けない」

言われて周りを観察して気が付いた

どうものぞき屋と間違えられたみたい

警察官に誘導され 無事にホテルに着く

二人とも汗びっしょり掻いていた

日本ではありえないことが 外国にはあることを体験した

旅はまだ始まったばかりだ